記事一覧に戻る

一橋地理の攻略マニュアル!(後編)

オススメ勉強法

世に出回っている地理の参考書は大半がセンター突破を目指す網羅的な読み物で、問題集は一問一答的な私大対策に特化した知識偏重型です。

これらではいずれも一橋地理には対応できません。

だいたい、世の中に地理論述のための参考書などほとんど出回っていません。

河合塾の『納得できる地理論述』と駿台の『地理既述論述問題集』がそんな中でも数少ない地理論述の対策問題集として高いシェア率を誇っていますが、いずれも地方国公立や東大型の、地理的知識に基づいたような問題集であって、確かに地理的なものの書き方を学ぶことはできても、一橋地理に見られるような地理的思考力はほとんど養えません。

一方で、『実力をつける地理100題』や『地理B標準問題精講』をはじめとした問題集については当然戦力外で、東進や山川の出している一問一答など言うまでもなく一橋には不向きです。

しかし、だからといって地理の勉強を書籍に頼らないで行うのはかなりの不安が残ると思います。

ここで重要なのは、一橋地理には自発的な地理学習が求められるということです。すなわち、参考書の中身「を」勉強するのではなく、参考書の中身「で」地理的に世界を見ることができればいいのです。

自主的に探究をすることで、地理的知見がグングン広がります。

要するに、ただがむしゃらに、地理っぽいことをとにかく吸収するのが、教科書を無視した一橋地理への有効な打撃となるのです。

ですから、私の場合には『実力をつける地理100題』と『地理B標準問題精講』を解きながら、決してそれを解いて理解することを目的とせず、その解説に現れた様々な「気になる点」を、都度『データブックオブザワールド』などの統計書で確認したり、地図で確認したりしました。

その中でさらに気になる点が見つかったら、どんどんどんどん深追いをしていきました。

そうすることで、地理という観点から今まで見えてこなかった世界の様々な表情がつかめてきます。

ある程度以降の深追いには、インターネットは欠かせません。

一橋地理とはいえ受験地理ですから受験参考書としての地図帳は欠かせないアイテムですが、一方で、私はグーグルマップも愛用しました。

例えば、地図帳では都市の内部を覗くことはできませんが、グーグルマップでは都市の中を直接見ることでその地域がどういった文化や経済を抱えているのかすぐに知ることが出来ます。

パンパとセルバの違いは地図帳では文字の情報だけですが、上空写真で見れば一瞬で理解できます。

熱帯雨林の中の鉱山開発が周辺の森林をいかに破壊しているかは写真で見てしまえばずっと記憶に残ります。

グーグルマップだけではありません。

気になった用語は下手に地理教材を使って調べるのではなく、ネットで調べた方がずっといいです。

地理用語を検索すると、地理受験生が少ないのが幸いして、直接学術的なウェブサイトや論文がヒットします。

そういった記事を閲覧することは、気になった用語の参考書的な抽象的な解説による理解に比べて、その事柄や理論が社会にどう還元されているか、など複眼的な視点でものごとをとらえられるようになる手助けをしてくれます。

こういった自主的な学習は、単に様々な細かい地理的知識やミクロな地理的理論を定着させるだけでなく、この「わからない」「気になる」を繰り返していくことでいつか「わかった」とき、自分の中で今までには出会えなかった地理的なつながりを無意識のうちに生みだします。

これが、教科書にそぐわない、それこそ範囲の見えない一橋地理への特効薬になるでしょう。

またこれらは、地球上の様々な地域についてその地域のイメージを持つことにつながります。

ここでいう地域イメージとは、こんな気候なんだろうな、とかこんな人種がこういった生活をしているんだろうな、とかこのくらい経済や産業が発展しているんだな、とかいった漠然としたイメージのことです。

世界中のいろいろな地域にこう言ったイメージを張り巡らせることは、複数の地域にまたがった出題をされたときに大幅なアドになるでしょう。

グーグルマップの活用で視覚的に地域をとらえられると述べましたが、同じくらい興味深いものがバックパッカーのブログです。

地図帳にあるいかにもマイナーな地名で検索をかけたりすると、バックパッカーのブログがよくヒットします。

そうでなかったとしても、都市や地域についてのワードで検索をかけているとよく出てきます。

バックパッカーたちは、その地域について地理的に非常に面白い解説を、生き生きとした写真に付け加えてブログを書いてくれています。

すなわち、我々と同じ日本人としての視座から見た世界のありのままを、また彼ら自身が旅人であるということから他の地域などと比較しながら、おもしろおかしく伝えてくれるのです。

私は、バックパッカーのブログほど世界の地域イメージをつかむのにピッタリな教材はないと思っています。

ここまで述べたような私のやり方は、私が社会学部志望だったため地理で特に点を稼ぐ必要があったことなどから、かなり行き過ぎたものであったかもしれません。

しかし、少なくとも、教科書や市販の参考書だけでは一橋地理と戦うことはできません。

ぜひインターネットを活用して、深い地理の世界にもぐりこんでみてください。

オススメ参考書など

以上をふまえて、私がオススメする参考書です。

とはいえ、教科書に縛られないだけ一橋地理の学習方法は人によってさまざまであるとも思います。

過去問を見て見るなどして一橋地理をある程度知ったら、実際に本屋に赴いて自分にピッタリな参考書をみつけてください。

・『納得できる地理論述』 - これだけでは一橋地理には対抗できないが、最も基本的な論述の「型」を抑えることができる。

・『実力をつける地理100題』 - これだけではとても一橋地理には対抗できないが、地理的知見を深めるためのキッカケとしてはうまく使えば価値がある。ただし、自然地理の知識整理にはそこそこ使える。

・『地理B標準問題精講』 - 上と同じだが、データが10年ほど前のものなのでいくら問題を解くのが目的ではないとはいえ問題集として問題がある。それに、マニアックな知識をタラタラ書くだけのつまらない記述問題が多い。迷ったら『実力をつける~』の方を。

・『データブックオブザワールド』 - 前半には受験地理レベルの統計が大量に並べられている。しかし、問題を解いて出てきた統計をこれで確認するだけでは意味がない。統計がなぜそうなるのかを考えることで一橋地理に対して真価を発揮する。なぜそうなるのか考えて自分なりの結論を導き出せたら、地理の先生に質問して確認しよう。後半には世界の国々にかんするデータがまとめられている。特に、小規模な発展途上国などにかんする情報を仕入れたいときには、下手にネットで調べるよりもかなり便利で使い勝手がいい。しかし、全体的に扱われている統計は各分野で重要なものばかりで、小回りは効くものの痒いところには必ずしも手が届かない、といった印象。

・『世界国政図絵』 - 上の『データブック』に対峙するもう一つのシェア率が高い統計書。こちらは統計に説明文があったりするなど、読んでいて面白い。両方買う必要はないが、どちらかはぜひ手元に置いておきたい。

・地図帳 - 学校で配布されたもので構わない。ボロボロになるまで使い倒そう。

・『地理の完成』 - 高校地理教材といえば帝国書院と二宮出版の二強であり、高校社会科の代名詞ともいえるものの地理の教科書を作らない山川出版は地理教材・参考書においては質・量ともにとても満足とはいえない。しかし、山川の出した地理教材のなかでもこの『地理の完成』だけは別。山川が地理教科書を作らないからこそ、教科書を無視した本書の内容は、同じく教科書にとらわれない一橋地理にはピッタリなハジけ具合。絶対受験じゃでないだろ、ってくらいの細かい地理トリビアが、自主的な地理学習のすごい起爆剤になる。おまけに、編集がすごい雑で文字サイズは整ってないし誤字脱字もたくさんあって、山川出版社の内部で地理が軽視されているのがよくわかる。山川に入社してしまったすごい地理オタクが、一人で勝手に企画して編集したんだろうな、といった感じがプンプンして同じ地理オタクとして非常に好感が持てる。どうか彼を守るために山川は地理の教科書をずっと作らないでくれ。とにかく、東大受験生でさえ持て余す下らない情報の爆発、正直なところ、日本の大学受験生でこの資料集が必要なのは一部の一橋受験生だけだと私は信じてやまないが、絶版されないのが本当に不思議でならない。どうやら前書き的にはセンター対策にピッタリだったかそんなんだったけど、この参考書でセンター対策とか効率悪くて絶対向いてない。でも、そういうところに気付いてない、いやむしろ気づかないふりをしている山川出版社の地理担当にとても愛着がわく。心の底からいとおしい。

・『地理の研究』 - 帝国書院が出版する、教科書的な意味で「完成された」資料集。おそらく対東大対策には最高の資料集。当然一橋地理に対しても十分に効果はあるが、『地理の完成』と比較してどちらを選ぶかは受験生次第でよい。ただし、帝国書院から出ている『COMPLETE』という資料集はこの『地理の研究』のフルカラー&やや内容カット版であり、使用されているグラフや表やその解説はほとんど同じであるため、もし学校から資料集として『COMPLETE』が与えられているなら絶対に買ってはいけない。

・『東大の地理25ヵ年』 - ある程度の論述の型がつかめたものの実際に一橋の過去問に取り組むのにはまだ早い高3の夏あたりには東大の過去問で演習を積むのはアリ。ただ、25ヵ年分解ききるのには時間がかかるし、昔のものは統計が変わっていると解けないものも多い。それに、東大を受けるわけではないから東大の出題形式に慣れ過ぎるのもよくない。東大以外の国公立大学の地理論述が易しいということはないので、東大に限らずいろいろな国公立大学の最近の過去問をネット上でダウンロードして演習したほうが効果的。ただし、問題を解いた後には必ず地理の先生から添削指導を受けること。

過去問について

地理の過去問は、特に昔のものになると統計が変わって解けなくなるとよく言われますが、それはあながち間違っていません。

需要がほとんどないので一橋地理の15ヵ年は販売されていませんが、仮に発売されていたとしても、10年も前のものになると解く価値がずいぶんと下がります。

それに、一橋に地理はしばしば難しいといわれますが、これでも近年急速に出題傾向がかわって易化しています。

それこそ10年以上前の過去問には、大量の統計と巨大な地図を与えて400字論述させる問題とか、統計から数値を読み取らせてその場で対数の計算をさせる問題なども出題されていました。そのような問題を現在の一橋地理の対策のために解くのは得策ではないでしょう。

現実的には、最大でも一橋の6ヵ年の赤本で6年分と、ネットからダウンロードしてきた2,3年分、それから駿台の一橋実戦模試の過去問3年分で全11,12セット程度がいいと思います。

過去問消費の仕方については、実際にはみなさんのコンディションや地理の先生と相談して決めてほしいですが、参考までにこの文章を書いている私の場合は、2月の中旬までに直近3年分を残し、それ以前は毎週1,2”題”ずつ大問を解くなどして、継続的に、少ない過去問を最大限バランスよく回せるように努力しました。なお、解いた問題はすべて先生による添削を受けました。

また、受験地理においては地理的理論を発想できることが重要であると考え、解いた問題の解きなおしは一切しませんでした。ただし、私は社会の配点が重い社会学部を受験したので、他学部を受験するなら地理のウェイトはもっと下げて構わないでしょう。

しかし、それでも過去問を演習したら添削指導を受けるのは非常に大事です。

ちなみに、駿台の一橋実践模試は世界史・日本史・地理をセットに3年分で1冊で販売されています。

もし身近に世界史・日本で一橋を受ける人がいるならシェアして買うとお得です。

近年の傾向と今後の出題予想

一橋地理は3題構成ですが、大問3に50字しか論述が出題されなかった2013年度を除き、例年はうち1題が特定の地域における特定の産業や社会状況についての出題、うち1題があるテーマに沿った世界を展望するような出題、あとの1題はこのいずれかです。

すなわち、前者では地球規模と比較して小さな視点から世界を視る力、後者では全世界という大きな枠組みから細かな事象を見ていくことが要求されます。

特定の地域にまつわる問題では、南米やアフリカなどの発展途上国がテーマになることが多いです。

れは一橋大学が経済・社会にかんする最先端の研究を行う場として、世界の途上国の発展への寄与に関する研究を多く行ってきているためだと考えられます。

また、一橋大学には社会地理学を研究している学者が2人いるのですが、2人ともとりわけアフリカ研究を専門に行っていることもこれの原因であると考えられます。

産業については、第三次産業の未成熟な発展途上国がテーマになりやすいことも手伝ってか農業や工業がテーマになりやすく、それらの産業を取り巻く、先進国や全世界との(主に)経済的なつながりが最終的に問われることが多くあります。

一方で、地域にまつわる出題で各種産業に経済を絡めた出題が多いのに対して特定のテーマに即した全世界的な出題では、都市・環境・観光・交通・生活など非生産業的・先進国的なテーマが扱われることが多いです。

しかし、これらのテーマからの出題であっても、問題の真のテーマとして経済の話を絡ませてくることが多々あります。

なお、特にそれこそ10年ほど前までは自然地理や自然環境にまつわる出題は文字通り全く見られなかったものの、既述の通り近年では、一問一答式や、社会的テーマと絡める形で短い論述として環境をテーマにした出題が見られるようになってきています。

確かに、一橋にも環境学や惑星科学に関する学者が全くいないではありません。

これからすぐに自然地理のみをメインテーマに据えた出題は引き続き見られないとは思いますが、それでも例えば同じく近年出題が増えている観光分野と合わせてエコツーリズムやジオツーリズムなどを本格的にテーマにした出題が起こらないとは言えません。

なお、以上のようなスタイル以外からもまれに出題があります。

近年では、2009年度に具体的な地名を出さないで地理学上のモデルだけで施行させる問題、2012年度に地形図を用いた問題が出題されています。

しかし、こういった一橋ではあまり見かけないスタイルの問題ではリード文などでフォローがしっかりなされているのがたいていなのであまり不安に思う必要はありません。

以上を踏まえて、今後の一橋地理において何が出ると断言することはできないのでやはり根本的に重要なのはすべての分野にまたがって広く深く学ぶことであると言えます。

そのうえで、一橋大学が経済系の大学であることを踏まえ問題を解くときには常に経済的観点を意識すること、今後も引き続きアフリカをはじめとした発展途上国の産業について出題されるだろうこと、環境や自然地理にかんする出題が今後増えるだろうことを踏まえた追加の学習をさらに行っていくことがこれからの一橋地理の対策にはふさわしいと思われます。

「一橋地理は難しいからやめた方がいい」のか?

「一橋地理は難しいから避けるべきだ」といった意見をしばしば耳にします。確かに、一橋の地理は易しくはありません。

しかし、現に地理で合格している人はいます。私だって、社会の配点が重い社会学部を地理で受験して合格しています。

それに、一橋地理は他大学の地理に比べて確かに異様であることからその事実が独り歩きして難しいとうわさされているような気がします。

しかも、すでに述べましたが、一橋の地理はここ10年ほどで急速に易化しています。

結局は、自分が最も得点できる科目を選ぶことが重要です。

そして、そのような科目はたいてい自分にとって興味がある科目です。

私も、高3の6月までは他の一橋受験生に流されるがままに世界史で受験をしようとしていましたが、成績と自分の興味を鑑みて地理受験に切り替えて、そして成功しました。

ただし、倫政・ビジ基と同様に、受験生が少ないことによるデメリットは覚悟しなければなりません。

地理対策について語れる友人はおらず、地理の参考書も少ない。地理受験の指南書もほとんどない――いや、これについてはこのパンフレットがあなたの味方になるはず……なってほしい……。

まあとにかく、このようなある種の「敵が見えない不安」と戦うためには、地理に関して絶対の自信を持つことが重要です。

そして、そのような自信は地理という科目を愉しむことで生まれます。

もしあなたが地理が好きなら、一橋地理は受験においてあなたを大歓迎するでしょう。

みなさんの合格を心よりお祈りしています。